インターフェースについて

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第3話:株価暴落の原因は?

インターフェース上の不備が原因で発生した可能性がある事件を紹介します。

1992年3月25日 午後3時56分の出来事です。いつものように、ニューヨークのトレーダーたちは狂乱状態の中にいました。取引終了直前は翌日の株価変動を狙った最後の取引が行われるため、この時間帯の騒がしさは日常的なものでした。しかし、この日は狂乱を通り越してパニックに達していました。金融街中のトレーダー達が一斉に売り注文を出し始め、ダウ・ジョーンズ工業平均株価がどんどん下がっていったのです。72年前の同日から始まった世界恐慌を思い出したトレーダーもいたことでしょう。

その数分前、国際投資銀行ソロモン・ブラザーズの証券事務員マイケル・バルティエリは、シニアトレーダーから「株式1100万の売却」の取引注文を受け取りました。彼の業務は、売り買いの注文をコンピュータに入力することでした。午後3時55分、マイケルは「1100万株」の売却をコンピュータに入力しました。しかし、この売却注文は「1100万株」ではなく「1100万ドル相当」の売却でした。そして「1100万株」に相当する金額は約5億ドルであり、1100万ドルとは比べ物にならないほど大きなものでした。入力直後から、ニューヨーク証券取引所とウォールストリート中のトレーディングルームがパニック状態に陥ることになりました。自分のミスに気付いたマイケルは、その中でただ呆然と座っていました。

本来ソロモン社では、コンピュータに入力された売買注文は、証券取引所に送信される前に別の事務員が確認することになっていました。しかし、この時間帯のように忙しいときは二重チェックを行う余裕などありませんでした。つまり、人間による事故防止策が用意されていたものの、実行はされませんでした。一方、コンピュータ側も事故防止にまったく役に立ちませんでした。「異常なほど膨大な取引を入力したときに警告を表示する」といった気の利いた機能は用意されていなかったのです。

証券取引委員会はこの取引ミスに関する調査結果を提供することを拒否し、公表された説明ではマイケルが取引注文を誤解したことになっています。しかし、取引注文を正しく解釈したにもかかわらず、間違ったフィールドに入力したことが原因である可能性もあります。ソロモン社のコンピュータには「株」と「ドル」の両方を処理する機能があり、間違ったフィールドに「1100万」を入力すると、誤入力どおりに処理をするようにできていました。事件後、ソロモン社はシステムの操作手順およびインターフェースデザインの修正を行っています。

次回は、一般ユーザー,上級ユーザー問わずに使えるソフトウェアを作るための方法について記載します。 → 第4話へ

参考文献:
(株)化学同人「事故はこうして始まった!ヒューマン・エラーの恐怖」
スティーブン・ケイシー 著/赤松幹之 訳